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テッサちゃんホームステイ計画
                                       作者 火元 炭
                                       
 
 
 
 
 


 
 

「う・・・」
息が苦しい、ここは・・・鬱蒼と茂る森闇の垂れこめる雨雲
一息ごとに砂を多く吸った水が流れ込んでくる、だが喉の渇きは癒えることなく自らを責め続ける

(苦しい・・・)
歩みが、募る疲れと痛みを告げる、

(そうだ、これが一番苦しかった)
そう思った後で自嘲気に笑みを浮かべる、ほんのわずかな口の動きが今の自分の精一杯だ・・・

(今までで一番苦しい、だ)
補給もなく今の装備だけで自軍までの30キロを歩かなければ行けない、その道は総て森に覆われ多数の崖が隠れている、呼吸することが苦痛で、疲労が重りとなって全身を縛り、空腹感が痛みを告げる・・・今や全身で正常な部位の方が珍しいはずだ
だが歩く、一歩一歩を踏みしめて・・・全ては作戦に失敗した自分の責任なのだから
歩く・・・息を吸えば全身に痛みが走り、身体全体に緊張感を与える、寒気のような不安感や重圧感が苦しい

(・・・しかし、こんなにも苦しかったか?)
歩き続ける・・・だが脚の痛みはほとんどない、あるのは呼吸するたび感じる圧迫感
この場にいることが苦痛で仕方ない・・・そこで、自分がずっと目を閉じていることに気づく
この場・・・
・・・
 
 

そっと目を開く・・・そこには自分にもたれて眠りおちるテッサの姿がある、少し離れてかなめ

(く、苦しい・・・)
テッサが宗介の胸に額を付いて眠っている、それはまぁ問題ない・・・重くもないし
宗介の足を枕に眠るかなめ・・・問題ない
問題は・・・そこかしこから感じられる悪意、殺意、害意・・・
壁を通して、監視カメラを通して感じられる凄まじいまでの殺意・・・加えて目の前の壁に掛けられた紙片に綴られたミミズののたくったような・・・SRT要員のみに読みとれる特殊暗号で

1,今晩は指1つとして動かないこと

2,大佐と千鳥かなめを起こさないこと

3・・・緊急の際はスタングレネード・発煙弾の使用を許可する

4,睡眠に弊害が出ると判断した場合睡眠薬2錠の使用許可

要は2人の眠りを阻害するなと言うことだろうが・・・3は理解できない
ともかく・・・息苦しい、宗介に向かい嫉妬の念が形となって襲い来る、実戦でならしたミスリルの猛者達だ、その殺気は伊達ではない
・・・ちなみに彼らの意思を統合すると

(相良め・・・何て羨ましい)
となる・・・
方や誕生パーティー以来テッサと並んでTDDのアイドルとなったかなめ、そして言わずと知れたテッサ
彼らの目には宗介が2人を侍らせて寝ているように見えるのだ、実際には2人が枕としているだけだが

「・・・」
時計の裏のカプセルを取るとかじる
・・・何度も何度も、あの夢を見た・・・
 
 

「う・・・ん」
体を起こすと大きく伸び、と小さく欠伸をする
そのままシャワーを浴びようと立ち上がり、何かにつまずいてずるべた〜んと大きく倒れ込む

「ふぁ?ふぁぁぁぁあ」
目の前に隠れ慕う部下の顔が大きく広がり、そのまま

(こ、このまま相良さんに倒れ込む?そしたら顔がぶつかって、あ、口がぶつかったりして・・・)
卓絶した情報処理速度とは裏腹にゆっくり着実に近づく顔と顔

(きゃ、きゃあっ・・・でも、相良さんなら)
テッサの思惑通りか否か、目の前に宗介の目が近づき、慣性の法則から外れがくっと上体がのけぞる

「あ、危なかったわねテッサ・・・大丈夫?」
ぜぃぜぃと荒く息を付きながら片手でテッサを支えるかなめ、勢いよく飛び起きたらしく髪が目にかかり鬼女に見え無くない・・・特に今のテッサにすれば

「え、ええ・・・でもかなめさん、ゆっくり寝ていれば良かったのに」
かなめの肩を支えに立ち上がるテッサ

「大丈夫よ、テッサこそすぐに転ける癖治らない?」

「かなめさんほど元気じゃないので・・・」
再び宗介の身体を挟んで睨み合う2人

「・・・私、少し用があるので一度失礼します」

「・・・そう、じゃあ私も一度家に帰らせてもらうわ・・・」
同時に歩き出すと並んで玄関に、そのまま同じように扉を出・・・かなめは階段、テッサは隣の部屋に

「マオ、台所借ります」

「・・・ふぇ?」
物音に体を起こしかけていたマオがソファから顔を出す

「・・・相良さんって好きな料理とか在ります?」

「即エネルギーに変わる物」
エプロンを付けながら聞くテッサに即答するマオ

「・・・例えば?」

「カロリーメイト」
冷蔵庫の中の物・・・前の住人がそのまま残していったので一通りの物は揃っている・・・を見ながら聞くテッサ

「他」

「干し肉」
調味料棚を物色しながら

「・・・他には?」

「コッペパン」

「何でまともな料理がないんですか?」
思わずマオに詰め寄るテッサ

「あいつって味とかは気にしないからねぇ、まともな料理食ってるのってほとんど見てないから」
鬱に考え込むテッサ、料理は簡単な物なら創れるが、干し肉だのコッペパンだのを材料に創れる料理など存在すら知らない

「クルツ、あんたは知らないの?」
ソファ脇に雁字搦めに縛られて置かれているクルツに声をかけるマオ

「ふむぅ、ふふんっふふぅ」

(まずほどけ、この縄)

「はいはい」
護身用のグルカナイフで縄を切るマオ

「宗介の好きな物・・・と言うか、最近とても美味かったと言ってた料理、もちろん知ってますとも」

「本当ですか?」
一縷な望みが見えたと言った感じで包丁とエプロン、大根を手にクルツに近づくテッサ

「もちろん」

「何ですか?」

「かなめの愛妻弁当」
どすっとそれまでクルツが転がっていた床に包丁が深々と突き刺さる

「て、テッサ、冗談だから落ち着け・・・」
両手で大根を振り上げるテッサがクルツの視界を埋め尽くす、逆光で表情が見えないのは幸か不幸か

「クルツさん、相良さんの親友のあなたならと思ったんですが、残念です」

「す、ストップ」
ごすっ・・・と、おおよそ野菜らしくない音を立ててクルツの鼻に当たる大根、冷凍庫に入っていたことが原因か?

「それでマオ、今の情報の信憑性は?」

「はっ、え、ええっと・・・前に宗介が珍しく嬉しそうに食事してたのを見たことが在るけど・・・ちょっと忙しかったんで、中身までは」
しばし考え込むテッサ・・・
ふと、前の住人が残したパソコンの電源を付けると、お気に入りからYohooを呼び出す(備考、yohoo、高水準の検束エンジンですはい、似たような物が他にある?気のせいですよ)

「・・・マオ、エネルギー効率が高ければいいんですね」

「え、ええ」

「相良さんはトマトと牛肉はお好きですよね」

「そ、そうね」
手慣れた手つきでキーを打つテッサ

「この料理に決めました」
映し出された文字はマオには読みとれなかったが

БЕФ-СТРОГАНОВ

これがどうやら料理の名前らしい

「マオ、相良さんの部屋の冷蔵庫にボルシチがあります、それを取ってきたください」

「は、はい」
最敬礼をすると急ぎその場から立ち去るマオ
・・・ちょっと怖くなってきたのでいったん退避します
 
 

「さてと・・・」
冷蔵庫を開けるとすぐ卵に手を伸ばそうとし・・・止める

(たぶん、テッサもご飯を作る気よね・・・それもかなり凝った)
とすれば、普通に料理を創っただけでは・・・
確かにテッサはどじで抜けてて常に転けている、だが、少なくとも自分よりも知識はあり料理に関する知識も多分にあるだろう

「まともにやったら勝てないわね・・・」
すでに当初の目的から外れ始めているが、それすらも全く気付いていない

「・・・」
どくんとかなめの体が大きく波打つ
かなめの身体を刺激と高揚感が走り抜ける・・・物理と数学で高得点を取ったときと同じ感覚だ

(カカ勝ちた。んでしー?)
くすりくすりと囁いてくる誰か

(教え、てヨッカ、勝つの教える、しいんでしょ?)
自分が自分で無くなってい・・・こうと一瞬したが

「うっさいわね、あんたは私の付属品なんだから大人しく知識だけ与えなさい」

(あ、あけ?)

「待ってなさいよ、テッサ、私のブラックテクノロジーを総動員して最高の料理を作ってみせるわ」

(あの、ちょっ、と)
ほら、さっさと知識をよこしなさい

(きゃあ〜)
ち、中尉・・・申し訳在りませんが退避します
それまで2人を監視していたヤンは急ぎその場を後にした
 
 

「む・・・」
宗介はその場で身を起こした・・・静かだ

「夢か?」
普段なら絶対に言わないだろう事を口にする、リアリティも現実味も妙な説得力も床に残った足跡もあるが、夢だと思ってしまえばそれに越したことはない
とりあえず空腹感を憶え冷蔵庫を開けるとトマトと干し肉を取り出す
それを口に運ぼうとし・・・

「相良さん」
バタンという扉の音と共に何かが飛び込んでくる

「た、大佐殿?」

「相良さん、お腹がすいたんですか?」
手に持つトマトを目にしたらしく笑みを含めながら聞いてくる

「はっ、予定時刻とは異なりますが」

「そうですよね、結局昨晩は何も食べなかったわけですし」
一瞬宗介の身体に違和感が走るが、テッサが何か重そうな物を運んでいるようなので手伝おうとそばに立つ

「お手伝いします」

「すみません、コンロの上に乗せていただけますか」
それは大きな鍋だった、所々に黒い焦げの付いた特大の、2.30人前は入りそうだ

「ふんっ」
蓋の上にアルミホイルと布が封印の如く厳重に為されたそれをコンロに乗せる宗介

「これを暖めればいいんです」
コンロに火を付けるテッサ、加熱された鍋が一瞬大きくたゆむ

「む?」
形而上不可解な歪みを目にした宗介は鍋を確かめようと近づくが、

「相良さんは向こうで待っていてください」
テッサによってリビングに追い出される

「し、しかし」
ボフッ・・・後にした調理場から妙な音が聞こえる
ごぶっごぶっごぶっ・・・どんな形容をすればいいのだろうか、おおよそ食料品の立てる音ではないが

「た、大佐殿、あれはいったい」

「相良さんの昼食です」
無垢な笑みを見せるテッサ

「椅子に座ってまっててくださいね」
 
 

ゴボッ・・・赤黒い液体が再び波紋を作る

「さっ◇どうぞ☆」
テーブルに座しそれを凝視する宗介、その向かいで頬杖付きながら宗介を見るテッサ

(これは、何だ?毒か?大佐は俺に死ねと言っているのか?)
皿に盛られて10分は経っているはずだが未だ沸騰の収まらない赤黒いシチューらしき物を見る宗介、最初皿の中にあったスプーンはへし曲がって出てきた
少なくともそれが食物でないことは確かだ、だが・・・
その時流されていたテレビのバラエティーに臨時ニュースが流される

『番組の途中ですが臨時ニュースです、東京近郊の動物園で犬がパンダに捕まり逃げられなくなりました、逃亡は不可能と思われます』

(逃げ道はないと言うことか・・・)
テッサは気付かなかったようだが臨時ニュースには幾つかの隠語が含まれていた、その中で犬は宗介、パンダはテッサを表すSRT要員下での隠語である・・・ちなみにマオは猫、クルツは馬

『せめて飼育員は餌だけでも食べてくれればとのことです』
飼育員はカリーニン

(・・・食べろ、と言うことか)
添えてあったスプーンで一匙取る・・・が

(臭いがない・・・)
刺激臭くらいは予想してあったくらいだが、この外見からではかえって不気味だ
口に運び、震える手で一口

(・・・)

「美味しいですか?相良さん」
無邪気な笑みで聞いてくるテッサ、だが・・・

(前、かなめに飲まされた毒ペと呼ばれる拷問道具、あれを500倍ほど濃縮して果肉を付けたらこんな感じだろうか)
一言でも口を聞こう物なら体液から血液まで嘔吐しそうなほどに喉が弛緩する、だが問題の”ブツ”はまだ口内にあるのだ決死の思いでそれを飲み下す

(ぐぅ、まるで塩酸を飲んでいるようだ)
痺れを含んだ激痛が喉から胃へ降下を始める
喉を通る際にも沸騰に似た化学反応を起こしているのだろう、所々で圧迫感を感じる
胃に到達した”ブツ”はその場で活動を再開した、煽動が全身を走る

「た、大佐殿・・・これは何ですか?」
混濁する視界の中、それだけを口にする

「ビーフ・ストロガノフです、それで・・・お味は?」
混濁する意識の中宗介にはテッサの言葉が一部曲解して伝わって

(ビーフ・カタストロフ、凄まじい威力だ、おそらくは捕虜の拷問用の物か、必要な栄養分は与えながらも味覚に痛烈な被害を与える)

「すばらしいです・・・おそらくは史上最高の・・・」

(拷問道具です)
腹部の激痛に思わず姿勢を崩す宗介、そのせいで最後の一言は言い逃してしまった

「そうですか?良かった」

「はい・・・」
楽しそうなテッサ、全身に脂汗を浮かべ苦しそうな宗介、だがそれも一時的な物で痛みはどんどん和らいでいく、この分なら10分としないうちに消え去るだろう・・・長い10分だが、そこに新たな乱入者が加わる

「宗介、入るわよ」

「千鳥か?」
てくてくと鍋を持ってかなめが宗介の前に立つ

「ご飯作ってあげる約束してたから持ってきたけど、今食べられる?」

「うむ、問題ない」
テッサが険しい目で見るがわずかでも苦しみを中和したい宗介に気付く余裕はない

「はい」
かなめの物もテッサと同じシチューのようだが、先程一匙すくったスプーンが融解するような物ではなく、平凡なクリームシチューのようだ

「すまないが頂く」
ほとんど奪い取るようにそれを皿に盛ると二口三口口にする、今までかなめからもらったお裾分けのどれよりも美味い

「ところで宗介、体調悪かったりする?」

「む?・・・す、少しな」
ビーフ・カタストロフの被害は未だ深刻だ

「そう、ちょうどいいわ」
宗介の頭に疑問符が浮かぶが、それより早くずっと残っていた歯の痺れが消える、

「む?」
それにつられて喉の引きつりも上から順にどんどん消えていく

「・・・いい気分だ」

「そうでしょう?」
テッサに向かい勝ち誇ったような笑みを浮かべるかなめ

「うむ、まるで癒されていくよう・・・だ」
その瞬間違和感と、そして先に倍する脂汗を浮かべる宗介
先の数倍の腹痛が宗介を襲う

「ち、千鳥・・・中に何が入っている?」
虚ろな目でそう問う宗介

「体調保持を目的としたナノマシンよ、体内の異物を即座に排除するわ」

「そ、それくらいなんです、私の料理には相良さんの免疫力を向上させる機能があるんですよ?」
すでにどちらも料理と言えない気がするが

「ちなみに、それはぶつかり合った場合どれほどの威力を誇る?」
宗介の問いにふと顔を合わせ

「私の物は、ごく微弱な刺激で体細胞を活性化させます、それは常温で正常に、高温になるほど活性化されます、また宿主の身体の変化に即座に適応します」
だんだん和らいでいったのはその適応性のためだろう

「私のナノマシンは異物を発見した場合即座に熱Eと化して細菌を包み込み、そのまま熱量限界まで引き上げることで細菌を死滅させるから」
結論、二つ合わされば腹の中にかなりの熱量と刺激剤を抱え込むことになる

(やはり、これも拷問用か・・・)
そのまま倒れ込む宗介

「嗚呼、急いで救急車〜」
結局、2日目の大半もまた宗介は寝て過ごすことになった
 
 
 
 
 
 
 
 

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作者は急病のため、あとがきには代役を立てることにしました・・・

内容を見て涙目で
テッサ「・・・あの、火元さんって本当にテサリストなんですか?」
アズライト「もちろんそうですよ、あ、ちなみに私は火元が「悪夢」で使用してるオリキャラです、仮病という重病で寝込んだ火元の代理人です」
テッサ「それにしては扱いがひどいような・・・」
アズ「次回からはまともな内容になるって言ってるから大丈夫ですよ・・・ただ、その場合かなめさんじゃなくてお蓮さん対テッサさんになりかねませんが」
テッサ「・・・どんな方ですか?」
アズ「火元がフェイミンさんと並んで属性表に加えようか悩んでる人です、基本的にかなめさんは少し火元の好みから外れてますから」
テッサ「私は・・・大丈夫ですよね?」
アズ「今の所は大丈夫ですよ、「悪夢」の続きを書いてまたギャグが恋しくならない限り、でも属性表にはテッサさんも居ないんですよね、ラクウェルさんくらいは加えると思ったんですが」
テッサ「・・・でも、かなめさんも居ないんですよね、そのお蓮さんという人も、だったら勝ち目はありますよね」
アズ「でも、次回の更新で火元が属性に加えようとしてる方がフルメタ内にいらっしゃるんですよ」
テッサ「だ、誰ですか?マオですか?カリーニンさんですか?ガウルンですか?」
アズ「・・・よりによって一番加えそうにない3人を上げましたね、違いますよ」
テッサ「誰ですか?」
アズ「ボン太さんです」

ふもっ?
 
 
 
 
 
 
 

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